ハーブが好きなわけ【第1話】
自然の中で育った薬剤師
──薬をあつかいながら、ふと立ち止まった日──
佐賀の山あいにある、ちいさな薬局で生まれ育ちました。祖父の代から続く薬局の、三人きょうだいの末っ子として、野山をかけまわりながら、自然とともに過ごす毎日でした。
季節ごとに風の香りが変わることや、山の緑が、日に日に濃くなったり色づいていくことそんなことを身体で感じながら育ったせいか、植物や自然のちいさな変化に気づく感覚は、いつも私のなかにありました。
大人になって、親のすすめもあって薬剤師の道を選びました。病院や薬局で処方薬を扱う日々。たくさんの人の“からだ”に関わるお仕事は、とても大切なものでした。
けれど、いつの頃からか心のどこかに、そっと違和感が芽生えていきました。
毎日たくさんの薬を数えて、袋に入れて、説明してその流れのなかに「人」や「気持ち」が見えなくなっていくような感覚。どこか機械的で、温もりが遠くにあるような…そんな風に感じてしまったのです。
薬には確かに力がある。でも、それだけでは満たされない「何か」がある気がして、私は少しずつ、別の方向に目を向けはじめました。
健康って、ほんとうはどんなものなんだろう?薬剤師として、私は何を届けたいんだろう?
そんな問いが、少しずつ心に広がっていった頃のことでした。
つづく…
【次回予告】次のお話では、そんな私が出会った「漢方薬」との時間。そこでも感じた、ある“違和感”について綴ってみたいと思います。また、お付き合いいただけたら嬉しいです。
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